私の資産運用先は、主に日本とアメリカです。
最近はドル建て資産の割合が増えてきました。
私の考えるドル建て資産の良いところとしては、下記の点があります。
しかし、本当にドル建て資産を増やして大丈夫なのでしょうか?
もし円高ドル安になった場合、折角貯めたドル資産の価値が下がってしまいます。
つまり、為替レートがどうなるかはドル建て資産を考えるうえで重要な情報になります。
ということで、今回は為替レートの決定要因に関する理論をご紹介します。
いつものように、参考にしたのはこちらの本です。
上記の画像は2017年に出版された最新の第4版ですが、私は2003年に出版された第2版を読んでいます。
1.小国開放経済モデル
生産額Yは生産関数によって固定的に決定します。
Y = Y* = F(K*, L*)
Y:生産額
K:資本
L:労働
消費Cは可処分所得が増えると増加するので、消費関数を下記のようになります。
C = C(YーT)
C:消費
Y:所得
T:税金
投資はIは利子率rの減少関数となります。
I=I(r)
I:投資
r:実質利子率
利子率は世界市場で決められる水準と一致します。
r = r*
r:実質利子率
r*:世界利子率
純輸出額NXは、自国での生産額Yから自国支出額を引いた額になります。
NX = YーCーG-I
NX:純輸出
Y:生産
C:消費
G:政府支出
I:投資
以上を組み合わせると、下記のようになります。
NX = Y*ーC(Y*ーT)-G-I(r*)
NX = S*ーI(r*)
つまり、純輸出は貯蓄と投資の差額になります。
貯蓄は消費関数と財政政策(政府支出・税金)によって変化します。
投資は投資関数と世界利子率の水準によって変化します。
続いて、為替レートと純輸出の関係を表します。
NX = NX(ε)
NX:純輸出
ε:実質為替レート
円安になると輸出は増えて、円高になると輸出は減ります。
そのため、NXは増加関数となります。
では、二つのNXを組み合わせます。
S*ーI(r*) = NX(ε)
この等式を満たす形で実質為替レートεが決定します。
グラフに表すと下のようになります。
このモデルから分かる実質為替レートに影響を与える要因として、下記のようなものがあります。
2.日本とアメリカの政府支出と為替レート
まずは、実質為替レートの推移を見てみましょう。
名目為替レートは日本銀行から、物価水準はWorld Economic Outlook 2018 Aprilから使用しました。
実質為替レートは、下記のように計算しています。
ε = e × P* / P
ε:実質為替レート
e:名目為替レート
P*:アメリカ物価水準
P:日本物価水準
青色の名目為替レートを見ると、1980年代後半から急激に円高傾向になっています。
2000年代は1ドル=100円付近を上下しています。
黄色の実質為替レートも1980年代後半から急激に円高方向に動きました。
しかし、1990年代後半から円安方向に推移しています。
この原因は物価水準にあります。
アメリカの物価水準は上昇していますが、日本の物価水準は横ばいです。
そのため、実質為替レートでは円安方向に推移しています。
もしドル建て資産を持っていたのであれば、ドルのままアメリカで使うよりも、円に交換して日本で使うほうがお得です。
日本で生活する私たちがドル建て資産を持っており、配当金をドルで受け取り、円に交換し、日本での生活資金に充てると有利ということになります。
このままドル建て資産を積み立てていけば有利なのでしょうか?
それは実質為替レートがどう推移するかによって変わってきます。
先ほどご紹介した小国開放経済モデルによると、下記のようになります。
日本よりもアメリカの政府支出増加が大きければ円高になります。
その点を2001年以降のデータで確認してみました。
横軸は、日本の政府支出(対GDP比)からアメリカの政府支出(対GDP比)を引いた値です。
縦軸は実質為替レートです。
相関係数は0.38です。
見た目にもわかるように、小国開放経済モデルが示すような結果にはなっていません。
いくつか理由は考えられます。
3.まとめ
ドル建て資産が得になるか損になるかは、将来の実質為替レートに依存します。
ドル円の実質為替レートは1990年代後半から円安方向に推移しています。
そのため、今のところ、ドルの配当金を得て、日本で生活するというスタイルがお得です。
今後の実質為替レートを予測するうえで、小国開放経済モデルから学べることは、
これらの情報は注意してフォローしていきたいですね。
最近はドル建て資産の割合が増えてきました。
私の考えるドル建て資産の良いところとしては、下記の点があります。
- ドルは基軸通貨であるため、日本円よりも信頼性が高い。
- 給与は日本円、配当金はドルで受け取ると、分散効果が高い。
しかし、本当にドル建て資産を増やして大丈夫なのでしょうか?
もし円高ドル安になった場合、折角貯めたドル資産の価値が下がってしまいます。
つまり、為替レートがどうなるかはドル建て資産を考えるうえで重要な情報になります。
ということで、今回は為替レートの決定要因に関する理論をご紹介します。
いつものように、参考にしたのはこちらの本です。
上記の画像は2017年に出版された最新の第4版ですが、私は2003年に出版された第2版を読んでいます。
1.小国開放経済モデル
生産額Yは生産関数によって固定的に決定します。
Y = Y* = F(K*, L*)
Y:生産額
K:資本
L:労働
消費Cは可処分所得が増えると増加するので、消費関数を下記のようになります。
C = C(YーT)
C:消費
Y:所得
T:税金
投資はIは利子率rの減少関数となります。
I=I(r)
I:投資
r:実質利子率
利子率は世界市場で決められる水準と一致します。
r = r*
r:実質利子率
r*:世界利子率
純輸出額NXは、自国での生産額Yから自国支出額を引いた額になります。
NX = YーCーG-I
NX:純輸出
Y:生産
C:消費
G:政府支出
I:投資
以上を組み合わせると、下記のようになります。
NX = Y*ーC(Y*ーT)-G-I(r*)
NX = S*ーI(r*)
つまり、純輸出は貯蓄と投資の差額になります。
貯蓄は消費関数と財政政策(政府支出・税金)によって変化します。
投資は投資関数と世界利子率の水準によって変化します。
続いて、為替レートと純輸出の関係を表します。
NX = NX(ε)
NX:純輸出
ε:実質為替レート
円安になると輸出は増えて、円高になると輸出は減ります。
そのため、NXは増加関数となります。
では、二つのNXを組み合わせます。
S*ーI(r*) = NX(ε)
この等式を満たす形で実質為替レートεが決定します。
グラフに表すと下のようになります。
このモデルから分かる実質為替レートに影響を与える要因として、下記のようなものがあります。
- 自国の財政支出増加・減税 → S-Iの右シフト → 円高
- 他国の財政支出増加・減税 → S-Iの左シフト → 円安
- 投資需要の活性化 → S-Iの右シフト → 円高
- 保護貿易政策 → NXの左シフト → 円高
2.日本とアメリカの政府支出と為替レート
まずは、実質為替レートの推移を見てみましょう。
名目為替レートは日本銀行から、物価水準はWorld Economic Outlook 2018 Aprilから使用しました。
実質為替レートは、下記のように計算しています。
ε = e × P* / P
ε:実質為替レート
e:名目為替レート
P*:アメリカ物価水準
P:日本物価水準
青色の名目為替レートを見ると、1980年代後半から急激に円高傾向になっています。
2000年代は1ドル=100円付近を上下しています。
黄色の実質為替レートも1980年代後半から急激に円高方向に動きました。
しかし、1990年代後半から円安方向に推移しています。
この原因は物価水準にあります。
アメリカの物価水準は上昇していますが、日本の物価水準は横ばいです。
そのため、実質為替レートでは円安方向に推移しています。
もしドル建て資産を持っていたのであれば、ドルのままアメリカで使うよりも、円に交換して日本で使うほうがお得です。
日本で生活する私たちがドル建て資産を持っており、配当金をドルで受け取り、円に交換し、日本での生活資金に充てると有利ということになります。
このままドル建て資産を積み立てていけば有利なのでしょうか?
それは実質為替レートがどう推移するかによって変わってきます。
先ほどご紹介した小国開放経済モデルによると、下記のようになります。
- 日本の政府支出増加 → 円安
- アメリカの政府支出増加 → 円安
日本よりもアメリカの政府支出増加が大きければ円高になります。
その点を2001年以降のデータで確認してみました。
横軸は、日本の政府支出(対GDP比)からアメリカの政府支出(対GDP比)を引いた値です。
縦軸は実質為替レートです。
相関係数は0.38です。
見た目にもわかるように、小国開放経済モデルが示すような結果にはなっていません。
いくつか理由は考えられます。
- 小国開放経済モデルは長期モデルなので、1年ごとの推移は説明できない。
- 投資や税金など小国開放経済モデルの別の要因を無視している。
- アメリカも日本も小国ではないので、小国開放経済モデルが当てはまらない。
3.まとめ
ドル建て資産が得になるか損になるかは、将来の実質為替レートに依存します。
ドル円の実質為替レートは1990年代後半から円安方向に推移しています。
そのため、今のところ、ドルの配当金を得て、日本で生活するというスタイルがお得です。
今後の実質為替レートを予測するうえで、小国開放経済モデルから学べることは、
- 日米政府の財政政策に注意する。
- 日米投資需要の変化に注意する。
- 日米貿易政策に注意する。
これらの情報は注意してフォローしていきたいですね。
スポンサードリンク
コメント