日本はインフレターゲット政策を実行しています。
デフレから脱却し、2%程度のインフレが持続する経済を目標としています。

下のグラフは、各国のインフレ率の推移です。
インフレ率の推移
どの国も1980年代から低下しており、2%程度の水準となっています。
しかし、日本だけが2%を大きく下回り、マイナスとなっている時期もあります。


物価上昇率がマイナス。
つまり、デフレとなっているのです。


では、デフレになると何が問題なのでしょうか?
商品の値段は下がるし、消費者にとってはうれしいのではないでしょうか。
その点が気になったので、こちらの本で調べてみました。




この記事では、デフレの問題点をご紹介し、資産運用時に気を付けたいことを考えてみます。


1.デフレの「害悪」

吉川氏の本では、デフレの「害悪」として、次の点を指摘しています。
教科書的には、デフレの「害悪」として二つの問題が挙げられる。
一つは、名目金利を一定とすればデフレにより「実質金利」が上昇する。不況の中で実質金利が上がれば、設備投資や住宅投資など投資の足を引っ張ることになるから、デフレは危険な「逆噴射」である。
(中略)
二つ目の問題は、20世紀前半に活躍したアメリカの経済学者アービング・フィッシャーが強調した、デフレと不良債権の悪循環だ。
(中略)
デフレにより負債の実質的負担が大きくなると、企業は倒産・破綻に追いやられてしまう。

吉川(2013)、『デフレーション』、p.8-9より引用
デフレの「害悪」として、
  1. 実質金利の上昇
  2. 負債の実質負担増大
の二つを指摘しています。


個別企業への株式投資をするうえで、特に二つ目の「負債の実質負担増大」が気になりました。
企業が設備投資をするために1億円を借り入れたとします。
企業はこの設備投資で1億2千万円の利益を見込んでいるので、1億円を借り入れることは合理的です。

しかし、デフレの影響で、販売商品の価格が下落した場合はどうなるでしょうか?
デフレのため、製造した商品も、人件費も、原材料費も、価格が下落しました。
その結果、利益も9千万円になりました。

しかし、借入金はデフレの影響を受けません。
1億円の借入金は1億円のままです。
もしこの企業の現金がギリギリの状況で操業していたら、1億円の借入金を返済できなくなります。

デフレは企業の資金繰りに多大な影響を及ぼします。



2.「負債の実質負担増大」から考える資産運用

デフレ下では、負債が多い企業が不利になります。
そのため、企業の自己資本比率や負債比率は重要な指標になります。
負債への依存度が高い企業の場合は要注意です。

インフレの場合は逆のことが起きます。
つまり、負債の実質負担が減少します。
そのため、負債比率が高い企業のほうが有利になります。


企業の負債比率や自己資本比率を見るときは、物価上昇率も考慮して、判断する必要がありますね。



3.まとめ

デフレの「害悪」に、負債の実質負担増大があることをご紹介しました。
最悪の場合、企業の資金ショートを引き起こすような影響力があります。
近年の日本の物価上昇率はプラスとなっていますが、ほとんどゼロなので、いつデフレに転換するかは分からない状況です。
個別企業に投資する際は、企業の負債比率に注意することが大切です。







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